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予防接種を受けましょう!

 いくつかの感染症は予防接種をすることで予防ができます。おたふくかぜやみずぼうそうなどの病気にかかっている人に病気をもらいにいくことはお勧めできません。予防接種で防げる病気は予防接種で済ませるほうがより安全だからです。予防接種をしても一部には免疫が充分つかずに感染することもありえますが、この場合も症状の軽症化が期待できます。また大勢が予防接種を受けるほどこのようなこともなくなります。できるだけ多くの方に予防接種を受けていただければと思います。

<行政が関与する予防接種(定期接種)>
対象期間中は無料で受けられます。居住地域内で受けることになりますが、地域外の医療機関での接種も可能です。

■三種混合(百日咳、ジフテリア、破傷風)■
百日咳はひどい咳が特徴です。赤ちゃんでは重症化しやすく入院が必要となることがある上、ひどければ命に関わることがあります。 ジフテリア、破傷風も感染すると命にかかわる症状がで出ます。

■BCG(結核ワクチン)■
現在も結核の患者は発生しつづけています。赤ちゃんがかかると粟粒結核や結核性髄膜炎といった重症結核を起こす可能性があるため、生後6か月までに打つことになっています。

■ポリオ■
感染すると麻痺を残すことがある怖い病気です。現在、日本国内の自然発生はありませんが、インドなどで流行が続いており、いつ持ち込まれてもおかしくない状況です。日本では飲むワクチンですが、他の先進国ではより安全な注射のワクチンに変わっています。

■麻疹風疹混合ワクチン■
麻疹(はしか)は昔、「命定め」と呼ばれていたほど怖い病気で命に関わることがあります。脳炎も比較的起こしやすく、インフルエンザよりもはるかに怖い病気です。風疹は妊婦がかかると赤ちゃんに障害を起こすことがあります。脳炎を起こすこともあります。より効果を高めるため海外では早くから2回打っている国が多かったのですが、最近ようやく日本でも2回打つようになりました。1歳代と小学校入学前年度に計2回打ちます。2012年度までは中1と高3も接種することになっています。

■日本脳炎ワクチン■
日本脳炎ウイルスを持った蚊が人間を刺すことで感染します。自然に感染した場合には1/100?1/1000の確率で発症します。症状が出るものでは、6?16日間の潜伏期間の後に、数日間の高熱、頭痛、嘔吐などで発病し、引き続き急激に、光への過敏症、意識障害(意識がなくなること)、けいれん等の中枢神経系障害(脳の障害)を生じます。脳炎を発症した場合20?40%が死亡に至る病気といわれており、幼少児や高齢者では死亡の危険は大きくなっています。助かった方も多くが何らかの後遺症を残します。行政の不適切な判断のため5年もの長きにわたり予防接種が控えられてしまった不幸な出来事がありましたが、2009年6月より新しいワクチンの接種が始まり、2010年度より従来通りの形に戻ることになりました。ただし2010年2月の時点では接種期間を逃してしまわれた方にどのような救済処置が行われるかはまだ決定しておりません。

<日本脳炎ワクチンの必要性>
 西日本は感染のリスクが高い地域とされています。感染時の発症率が1/100?1/1000ですが、発症した場合の死亡率や精神障害や運動障害などの重度の後遺症の割合はかなり高い病気です。日本脳炎ウイルスは日本だけでなくアジア全体に存在しており、患者数はアジア全体で年間3?5万人で致死率は20?40%、生存者の45?70%に後遺症が出るとのことです。さらに西ナイルウイルスなど日本脳炎ウイルスと類似のウイルスは世界中に存在しています。西日本に住んでいる子供、海外(特に東南アジア・南アジア)に行く方では、予防接種を受けることが望ましいでしょう。世界保健機構(WHO)は日本脳炎の流行地域では接種を行うように推奨しています。日本では予防接種や環境整備の結果、昔と比べると患者数は激減していますが、毎年、感染者の報告があります(感染者はワクチンを受けていない方ばかりです)。

<その他、接種可能な主な予防接種(受けたほうが良い予防接種)>
ここに紹介するワクチンは諸外国ではごく一般的なワクチンで多くの子供たちが接種しています。しかし、日本では残念なことに行政からの補助がないため有料で、接種率も高くありません。どれも受けていただきたいワクチンばかりですので、子供手当てを充てるなどして子供の健康を守りましょう。

■おたふくかぜ(ムンプス)■
ほほの腫れと痛みが特徴です。発熱を伴うこともあります。200?3500人に1人くらいの割合で回復が難しい聴力低下や難聴を起こします、また髄膜炎、膵炎といった合併症も起こしやすく、入院が必要なこともあります。またおたふくかぜと紛らわしい病気が多いため正確に診断できないことがあります。そのため何度もおたふくかぜの疑いで園や学校を休む子供がおられます。予防接種の副反応で非常にまれですが、髄膜炎を起こすことがあります。しかし自然に感染するよりもはるかに確率は下がりますし、大半はワクチンと関係なく起こるもののようです。日本のおたふくかぜの流行状況を考えると非常にメリットが大きい予防接種のひとつです。WHO(世界保健機構)は予防接種体制のしっかりした国では積極的に行うべき予防接種と各国に通達していますが、残念ながら日本はそれに従っていません。

<図:ムンプスワクチンを定期接種している国々(オレンジ色)>
ムンプスワクチンを定期接種している国々

要チェック大阪小児科医会のおたふくかぜワクチン啓蒙ポスター

■みずぼうそう■
体中に水疱ができます。症状を軽くする薬もありますが、みずぼうそうの後、数年から数十年して起こる可能性があるひどい痛みが特徴の帯状疱疹は薬では予防できません。免疫に問題のある方の場合は命に関わることがあります。これらの点で予防接種にメリットがあります。ときに予防接種をしてもみずぼうそうになることがありますが、軽くてすむことが多いです。WHOは先進国ではみずぼうそうの予防接種のメリットが大きいとしており、予防接種を勧めていますが、やはり日本では実現されていません。
      
■子宮頚癌ワクチン■
現在、日本人では1年に2500人程がこの癌のために亡くなっています。発癌性ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で起るため、このウイルスの感染をワクチンで予防することで癌の発症を抑えることが可能です。女性の8割がこのウイルスに一生のうちに1度は感染すると言われています。ヒトパピローマウイルスは感染しても多くの方は自然と治るのですが、十分な免疫がつかないため、繰り返し感染する可能性があります。そして感染された方の一部が癌化することがわかっています。20代、30代の女性の癌では一番多い癌でもあり、そのため子供のうちに予防することが効果的です。諸外国では小学校高学年もしくは中学生の女の子全てを対象にワクチン接種が行われている国が増えています。WHOは全ての女の子に接種することを勧めていますが、やはり日本では実現されていません。50歳くらいまでの女性にも効果があります。ただしワクチンを受けても完全に予防はできないため20歳以降は定期的に子宮頚癌検診を受けることは必要です(ワクチンと検診を合わせることが最も効果的とされています)。

■ヒブ(Hib)ワクチン■
ヒブとはインフルエンザ桿菌b型のことです。インフルエンザウイルスと紛らわしいのですが、全く別の細菌でインフルエンザ自体とも特に関係はありません。しかしこの菌は小児において細菌性髄膜炎を始めとした重症感染症の原因となることがあります。小児の細菌性髄膜炎の原因菌の約60%を占めており、年間発症者数は600人と推計されています。ヒブ髄膜炎の予後は悪く、5%が死亡し、23%が難聴、硬膜下水腫、てんかんなどの後遺症を残します。

<図:細菌性髄膜炎の原因菌>
細菌性髄膜炎の原因菌

治療薬は抗生剤で行いますが、最近は抗生剤の使いすぎの影響もあり、薬の効きが悪いヒブが増えてきています。感染しないことが重要となります。予防接種は大変有効であり、実際、多くの国ではこの予防接種をすべての子供に打つことでヒブ髄膜炎の発生を90?100%の高確率で抑え込みました。日本は予防接種に関しては残念ながら後進国であり、WHOが全小児への接種を勧めているにも関わらず、2008年末までは接種できませんでした。小さい子ほどかかりやすいのでできるだけ早く打つことが大事です。

<図:日本より早くヒブワクチンを打っていた国々(水色)>
日本が導入する前にヒブワクチンを導入していた国

<図:ヒブワクチンを定期接種としている国>
ヒブワクチンが定期接種の国(2008年)

<図:年齢別ヒブ感染症発生数>
年齢別ヒブ感染症発生数


■小児用肺炎球菌ワクチン■
肺炎球菌はヒブについで多い細菌性髄膜炎の原因菌で、死亡率や後遺症を残す確率はヒブよりも高くなっています(ヒブワクチンの項目の最初の図を参照してください)。この菌による髄膜炎は、年間200人くらい発生しています。肺炎(12,000人)や、重い中耳炎、菌血症や敗血症も起こします。ワクチンを打つことでこの菌が原因の感染症のリスクが7?8割減少します。この菌も治療薬である抗生剤の効きが悪い耐性菌が多いので予防接種でかかりにくくしておくことが大切です。WHOが全小児への接種を勧めているにも関わらず、最近まで接種もできませんでした。

<図:小児用肺炎球菌ワクチン導入状況>
肺炎球菌ワクチン導入状況


<最後に>
海外ではこれらの予防接種は積極的に行われています。多くの国では無料のようです。またここにあげた以外の予防接種(B型肝炎など)も行われています。日本ではいまだに打つことができないワクチンもあります(ロタウイルスや副作用のより少ないポリオワクチンなど)。残念なことですが、日本は予防接種の後進国です。ここに取り上げたような情報も行政からは提供されません。この現状を変えるためにはできるだけ多くの方に今の状況を認識していただくことが大事だと考えます。

<図:定期接種の国際比較>
定期接種の国際比較

<当院のお勧めする予防接種スケジュール>
予防接種のお勧めスケジュール

すべての子供たちに世界標準レベルの予防接種を受けさせてあげたい。それが当科の願いです。

(注:ここに取り上げた図の多くはワクチンメーカーの資料やインターネット上で入手できる資料を使用させていただいております。)
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